結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 中には紳士的な男もいるが、そうでない者の方が多い。ソフィアが一人で子育てをしていることがわかると、途端に態度を変える。子連れは勘弁という男と、子連れだからいいという男がいる。後者は特に質が悪い。子供を人質のようにして、ソフィアを飼おうとする男だからだ。

 こうした話は全て、一人身の母親たちから聞かされていた。というのも最近はセイリュースで出会った、一人で子どもを育てている母親たちを中心にレース編みや刺繍を教えている。


編み方や刺繍を教えながら、お喋りにいつも花が咲く。そうしているうちに、ソフィアたちが光沢のあるナード糸で編んだレース編みが評判となり、お土産店で売れるようになってきた。商売上手なエルーサが広めてくれたお陰でもあった。

 この地方でしか採れない植物のナードから作られたナード糸は、独特の光沢がありお土産として評判がいい。

 ネックレスやチョーカーのペンダントトップにもなる小さな花のレース編みや、コースターにテーブルクロス、最近では本のしおりも作っている。

 夏の避暑地というだけでなく、白い建物群と青い海のコントラストが美しいため、セイリュースは観光地としても平民の間で有名になってきた。地元の特産品として、ナード糸で編まれたクロッシュレースの小物たちは人気が高い。

 ソフィアはそろそろ、酒場で働くのを辞めてレース編みに集中しようかどうか、迷うほどであった。
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