結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 セイリュースの街の家の壁は漆喰で固められている。白い壁に、鮮やかな青色を使った屋根が多い。最近では街の景観も観光資源になるからと、青い屋根に白い壁の家しか建てることが許されていない。

 初めてリヒトが壁に落書きをした時はヒヤリとしたが、水をかければ綺麗に落ちたのでホッとしたものだった。他にも思いもよらぬことをするから、小さな子どもからは目が離せない。

 絵を描いてばかりいるのは、やはり絵描きだったアルベルトの子どもだからかもしれない。嬉しそうに絵を描くリヒトを見るのはソフィアの楽しみだった。残念なことに上手に描くことができても、最後に水をかけて消さないといけないのはちょっぴり寂しかった。

「リヒト、今日お店はお休みだから、お昼寝した後はどこか行こうか」
「ほんと? ママ、だったら僕、海に行きたい!」
「海? 近くの海岸がいいの? それともお船のあるところ?」

 お昼ご飯に用意したのは、パンにゆで卵を挟んだだけのサンドイッチだ。それを口いっぱいにほおばって、もぐもぐと食べている。ソフィアは手芸は得意だったけれど、料理はまるっきりできなかった。

 それでも自分で用意しなくては食べていけない。酒場にいる料理人に教えて貰って、自分でも見よう見まねで作ってみることで、なんとか食事らしいものを食べている。

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