結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「いや、うちはいいんだよ。七人も子どもがいれば、一人くらい増えたってなんてことないさ」
「本当にいつも、ありがとうございます」

 レティはいいんだよ、と言いながらもソフィアを見てため息をついた。

「あんたもまだ若いんだし、美人なんだからさ。いい男の一人や二人捕まえて、早くリヒト君に兄弟をつくってあげなよ」
「それは……」

 子どもをたくさん産むことが女の幸せだと疑わないレティは、ソフィアがいつまでたっても結婚しないでいることを不思議に思っている。悪気があって言っているわけではない。わかっているけれど、ソフィアは最近レティと話すのが苦痛になってきた。

「昔の男なんて、早く忘れて次にいくんだよ」
「そうですね、あの、リヒトをよろしくお願いします」

 青い扉を閉めると、ソフィアはふーっと息を吐いた。本当なら辞めれるものなら酒場で働くことは止めて、夜はレース編みをしながらリヒトとゆっくり過ごしたい。

 けれど、ナード糸が入手できなくて頑張ろうにも頑張ることができないのが辛い。他の糸でつくったとしても、光沢が違いすぎて安値で買われてしまう。

 収入を一つに絞るのも、何かあった時に怖い。酒場で働くことにも慣れて来たから、出来ればこのまま続けたいけれど、いつまでもリヒトを隣の家に預かってもらうのも気が引ける。

「昼間の仕事も増やせないからなぁ」

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