結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 昼間は雑貨店の店番をしなくてはいけない。家賃を払わないで住まわせて貰えているのは、ソフィアが店を切り盛りしているからだ。

 月に二回は休みの日があるけれど、さすがにその日はリヒトと一緒に過ごしたい。収入を増やしたいけれど、どうしたらいいのかわからない。

 リヒトも大きくなってきたから、穴の開いた靴を変えてあげたい。でも、新しい靴を買う余裕もないから、誰かのお古が回って来るのを待っている。ここセイリュースにいる平民の間では、お古を使いまわすことは当たり前だが、かつてのソフィアは何も知らなかった。

 五年も暮らしていると、ソフィアもずいぶん平民の暮らしに馴染んできた。最近ではソフィアが元貴族だと気付かない人の方が多いくらいだ。

「はぁ、がんばらなきゃ」

 給仕をする時に男性たちから胸に向けて視線を感じる。一緒に働いている女性は、物陰で胸を触らせるだけでチップを弾んでくれるよ、と言っていた。ソフィアは特に乳房が大きい方だから、触りたい男なんてはいて捨てるほどいる、と言われていた。

 正直、チップを貰えるのは魅力的だけれど、胸を触られるだけで止まるとは思えない。

 男性との経験はアルベルトしかないけれど、母親たちの話からすると彼はかなり優しかった部類に入る。それに、やはり娼婦のような真似だけは、何も知らない他人に身体を触られることはできそうにない。

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