結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ～裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ～

「あの、その話って本当なんですか？」

　男たちにそっと話しかけると、一人の男は眉を寄せて顔を曇らせた。まさか、酒場の給仕係のソフィアが商売の話に興味を示すとは思っていなかったのだろう。

「あ～、ソフィアさん。悪かったな。今のは聞かなかったことにしてくれ」

　そう言った後で、ソフィアを手招きすると男は耳元に口を寄せ、小声で囁いた。

「あんたもヘザーズのことは探らない方がいい。何をされるか、わかったもんじゃないぜ」

　男は釘をさすようにソフィアに告げた。それだけ言うと、後は相手の男と話題を変えてしまい、もうソフィアの方を見ることもなかった。

（どうしよう、ヘザーズって悪魔の商人が来てしまうのね）

　男は噂が広まるのを恐れているようだった。それだけ恐ろしい会社であるヘザーズが、ナード畑を購入して一体どうするのだろうか。

　不安になるけれど、ソフィアはすぐに客に呼ばれてしまう。今は仕事に集中しようとそこで意識を切り替えた。





　翌朝、エルーサが久しぶりに雑貨店を訪れると、ソフィアは昨夜聞いた話を伝えた。

「ヘザーズが来るって本当かい？　バックにでっかい貴族がいるって噂だけどね。うちみたいな小さな商売には、関係ないとばっかり思っていたけど」
「エルーサ、そこって悪魔の商人と呼ばれているの？」