結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~

ヘザーズ

「んーっ、っと! よし、行ってくるわ」
「気をつけてね」

 残って店番をするエルーサに手を振ると、ソフィアはいつもの白い帽子をかぶって外にでた。





 トントン、と青い扉を叩いて待っていると、ギイっと音をたてて扉が開いた。

「お待たせしましたって、あぁ、ソフィアか。今日は何かあったか?」

 普段はシャツを腕まくりしてシンプルな恰好をしているジミーが、今日に限ってジャケットをはおり髪を整えている。いかにも整った服を着たジミーは、訪問してきたソフィアを見て何かを思いついたように手を打った。

「ソフィアって元貴族だろ? 今日はこれから貴族が来るから、ちょっと手伝ってくれないか?」
「え、貴族の方が来るの?」
「あぁ、ヘザーズって会社の社長だよ。ソフィアも名前ぐらいは聞いたことあるだろう」
「あっ、私。そのヘザーズのことを聞きたくて来たの。ヘザーズがナード畑を買うって噂を聞いて」
「なんだ、もうソフィアのところにまで噂が届いているのか……、あぁ。これからその話をすることになっているんだ。俺も親父も貴族の習慣なんてさっぱりだからさ、ソフィアが茶でも淹れて持って来てくれよ」
「わかったわ、私はどうしたらいい?」
「あー、まずは召使用のエプロンをつけてくれ。奥に人がいるから、聞けば教えてくれるからさ」

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