結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 白いコースターを見た青年がふわりと微笑んだ。その笑顔を見てソフィアの心臓がまたトクンと跳ねる。

 ——もっと、彼の笑顔を見たい。

「そ、そう?」

 きっと、顔が赤くなっている。青年に褒められて嬉しいのと同時に、熱心に見つめられると恥ずかしい。

 それに、初めて会ったのにちょっと馴れ馴れしすぎたのかもしれない。思わず話しかけてしまったけれど、道端で会った青年と挨拶以上の会話をするなんて、ソフィアには初めての経験だ。

「それ、もっとよく見せてくれる?」

 手を差し出してくる青年に渡そうとしたところで——、青年の手は木炭を握っていたため黒くなっている。

「あっ、ご、ごめん!」

 白いレース編みを汚してはいけないと、慌てて手をひっこめた青年はズボンで手を拭いてしまう。今度はベージュ色のズボンが汚れてしまった。

「うわっ、しまった!」

 慌てた様子の青年は、今度は自分の顔を触ってしまい今度は炭で鼻が黒くなってしまった。それを見たソフィアと視線が合うと、思わず二人とも笑ってしまう。

「ふふ、ふふふっ」
「はははっ」
 
 白く輝く路に青い海、突き抜けるように澄んだ空が二人のこころを軽くしていた。王都であれば声をあげて笑うことなど許されないのに、ここではそれをしない方が難しい。

 久しぶりにえくぼを気にせず笑ったソフィアの笑顔を、青年は眩しいものを見るように碧い瞳を細めて見つめていた。
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