結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 でもつい考えてしまう。もしも六年前に戻れるとしたら……、いや、そんなことを今さら考えても仕方のないことだ。アルベルトはソフィアを迎えに来なくてローズを選んだ。もう結婚しているであろう彼のことを知ったとしても、今更何も始まらない。

(でも、あんなにも優しい人だったのに……、どうして)

 脅すようなことを言う人ではなかった。優しいアルベルトと、冷淡なアルベルト。どちらが本当の彼の姿なのかわからないけれど、今のソフィアが守るべきものはリヒトだ。冷淡な彼を知ってしまうと、余計に恐ろしくなる。

 その一方で、ソフィアはアルベルトの優しい人柄も知っている。アルベルトにきちんとナード糸と、その作品を見せて説明をすれば、違う方向で考えてくれるかもしれない。

(そうね、いい機会かもしれないわ)

 他でもない、アルベルトなのだ。一度は愛した人だからこそ、ソフィアの話をきちんと聞いてくれると信じたい。

 ソフィアの胸の中には今もアルベルトを想っていた時の彼の残像が残っていた。その残像が胸をキュンと締め付ける。本当は再会できて嬉しかった。自分は彼の恋人だったと叫びたかった。どうして自分を捨てたのかとなじりたかった。でも、そんなことをしても今の状況は良くならない。

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