国民的アイドルの素顔についての報告書
「俺の部屋、来て」
拓斗の部屋は2階の角。お母さんとお父さんの部屋から一番遠いところにあるから、ふたりに言えないことをするときはいつも決まって拓斗の部屋だった。
私の先を歩く拓斗に着いていく。とんとんと階段を上がる間、会話はなかった。
部屋の扉が静かに開けられる。入って、と招き入れられた部屋は綺麗に整頓されていて、私は床に座るかベッドに座るかの二択を与えられた。
何となく、床を選んだ。
叱られるなら、別れを告げられるなら、いっそ惨めにどこまでも落ちていきたい。
この先に起こることを想像して、また涙があふれてきた。目の前が滲んで、まともに話なんてできそうになかった。
「めぐ」
名前を呼ばれる。返事は鼻をすする音。しばらくの沈黙のあと顔をあげると、そこには私と同じ高さに視線を合わせて座る拓斗がいた。
珍しく、眉が下がっている。
「どしたの、そんな顔して」
無理やり笑ってみせたけど、ぶさいくで仕方なかっただろうな。歪む口元を頑張って形づくっても、次の言葉が出てこない。
拓斗の部屋は2階の角。お母さんとお父さんの部屋から一番遠いところにあるから、ふたりに言えないことをするときはいつも決まって拓斗の部屋だった。
私の先を歩く拓斗に着いていく。とんとんと階段を上がる間、会話はなかった。
部屋の扉が静かに開けられる。入って、と招き入れられた部屋は綺麗に整頓されていて、私は床に座るかベッドに座るかの二択を与えられた。
何となく、床を選んだ。
叱られるなら、別れを告げられるなら、いっそ惨めにどこまでも落ちていきたい。
この先に起こることを想像して、また涙があふれてきた。目の前が滲んで、まともに話なんてできそうになかった。
「めぐ」
名前を呼ばれる。返事は鼻をすする音。しばらくの沈黙のあと顔をあげると、そこには私と同じ高さに視線を合わせて座る拓斗がいた。
珍しく、眉が下がっている。
「どしたの、そんな顔して」
無理やり笑ってみせたけど、ぶさいくで仕方なかっただろうな。歪む口元を頑張って形づくっても、次の言葉が出てこない。