君だから、好きなんだ。
「行ってきまーす」
そう言って、ドアを開けようとした瞬間…
ドカッ
「イタッ…」
「邪魔だよ…ブース」
そう言って、私のムカつく弟が私の背中を蹴って走り去った。
「こんの…ガキ…絶対許さんっっ!プラモ絶対へし折ってやるからねっっっ!」
私は、走り去る弟を外まで追いかけて、そのムカつく背中に向かって叫んだ。
ハァハァハァ…ただでさえ寝不足なのに…
体力つかわせんじゃないわよっっ!
「おい、邪魔…」
さっきから、何なのよっっ!
そう思って後ろを振り返ると、そこには朝から眩しいくらいに爽やかな男が私を見下ろしていた。
「…恵太」
今…邪魔って言いました?
私の幼稚園からの腐れ縁の幼馴染…
上谷 恵太(かみや けいた)
家が隣同士で、家族ぐるみで仲がよくて、お互いの家を行き来さしているせいで、男子に縁遠い私には唯一の一番身近な男子だ。
だけど、彼は私の弟並に性格が悪い…そしてとにかく私に、昔からずっと意地悪だ。
せっかく同じ高校なんだから、一緒に楽しく登校してみたいなぁと思うけれど、それは夢のまた夢。
だって私は…多分…彼に嫌われているから。
「あ、おはようっ…」
私は慌てて明るい声を出して恵太を見た。
「よく、毎度毎度…姉弟喧嘩するよなぁ…しかもお前のほうが、3つも上なのに…女らしさの欠片もないなっ。」
朝からチクチク…刺さります…
話題を変えなくては…
「あっ、そういえば…今日のテストっっ…」
ハッッダメだって…その話はっ。
「テストがなんだよ?」
「アハハ…何でもないっ!」
恵太は毎度、成績上位者っっ。
また、バカにされるっ。だって…私は、一夜漬けさえも…失敗した身。
「あっ、早く行かないとバスに乗り遅れちゃうっ!」
そう言って、横断歩道をダッシュで渡ろうとした時…
ガシッッ
私の背中のリュックを思いっきり掴まれた…
「えっ…」
その瞬間…私の目の前をトラックが猛スピードで走り去った。
ヒッッ…ヤバッッ
死ぬところでした…。
「………ハハ…ごめん…」
「お前なぁ…本当…バカ」
「す、すみません…」
そう言った彼の顔をこっそりと見上げると、大きなため息をついていた。
それと一緒に…
ポツリと呟いた言葉が微かに聞こえた。
「…寝不足なんだから、大人しく歩いてろよな。」
え…
何で…私が寝不足って知ってるの…?
「え…何で?」
「は?」
「だから…何で知ってるの?」
「そりゃ…そんな深いクマつくってれば誰でもわかるだろ…」
「あ、そうですよね…」
なんだ…
そうだよね…私が徹夜してたことを知ってたのかななんて思ってしまった…
「どうせ…漫画読んでて、範囲終わらないって泣いてたんだろっ(笑)」
グッッ…なぜわかる?もしかして見てた??
「はぁ?!な、なわけないでしょ…完璧だし」
「あ、そっ…せっかく、山を教えてやろうかなって思ったのに…」
「えっっ!」
そう言った彼の顔を見て、私は思い切り後悔した。
ヤバイ…またパシられる。
「しょーがねーな。」
恵太の不敵な笑み…。
こんな時は、本当に最悪だ。
「いいっ、私…大丈夫だからっ。」
そう言い捨てて、停留所に停まったバスに勢いよく乗り込んだ。
私の後ろをニヤニヤしながら追いかけて乗り込む恵太。
「本当にいいのかぁ?このままだと、また最下位決定なんだろ?おばさんに、スマホ取り上げられるぞ…?そしたら、お前が好きな携帯漫画見れないぞ?それでも…いいのか?」
私の弱点…よくご存知で…。
どうして…私はいつもこんなについてないの?
「…わかったわよ…じゃあ…教えて。」
「はぁ…?その態度じゃ無理だな。」
この性格っっ!本当に意地が悪いっっ!
「お、…教えてください。」
「お願いしますは?」
「教えてください、お願いします!!」
「じゃあ、メロンパン、焼きそばパン、コーヒー牛乳とプリンな。」
「はい…?」
「昼休みに学食で待ってるからなっ。」
ガクッ…
「わかった…」
「じゃあ、ほらっ。ありがたく頂戴しろっ。」
そう返事をして肩を落とす私の手に恵太はノートの束を押し付けた。
「…ありがとうございます」
ズシッ…なんか嫌な重みだわ…
さっそく、ノートを広げると英語、現国、公民が綺麗な字でわかりやすくまとめてあった。
「…す、すごい」
さすが…秀才は、ノートのとり方までスゴイのね…
学校に到着するまであと30分…
とにかく、1校時の公民を暗記するしかない…
頑張らないとっっ。
…………………
「…おいっ」
「えっ?」
「バス、着いたぞっ。」
「はっっ…」
しまった!寝てしまったっっ!
「お前…よだれ垂らして寝てたぞっ。」
「えっっ」
慌てて口を拭うと、口によだれが付いていた…
そして、ノートにも…
や、やばい…
「最低だな?」
恵太の呆れた視線が私に突き刺さる。
「…ご、ごめん」
恥ずかしすぎて死んでしまいたい…。
バスから降りると学校まで10分歩くこの距離が、こんなに長いと感じたことはない。
つ、ツライ…
私…寝てたの?
もう、完璧アウトじゃん…っ。
「あのさ…ノートごめんね」
「…本当に…ありえないよなっ。」
返す言葉もありません…。
「…あ、この部分だけコピーして、貼り直すから…っ。」
そう言って恵太の顔を見上げる。
「…フッ」
え?
「…いい」
今…笑った?バカにしました?
人が…真剣に謝ってるのにっ。
「…じゃあ…すみませんでした。」
「…あ…そうじゃなくて。」
彼が呟くように言った言葉はもう、私には聞こえなかった。
それからは、恵太の方を見ないようにした。
…いつも思うけど、何で恵太は朝練で部活がある日を除いて私と一緒に登校しているんだろ?
会話が弾むわけでもないし…。
しかも大抵…私に意地悪だし。
だから、私はできれば一人で気楽に登校したい。
それに…憂鬱な原因の最大の理由…それは
「あ、上谷くんだっっ!」
「上谷くん、おはよ〜う」
「きゃあ、カッコいいっっ」
朝から黄色声。
女子からの熱い眼差し…
そう…彼はめちゃくちゃモテている。
そう言って、ドアを開けようとした瞬間…
ドカッ
「イタッ…」
「邪魔だよ…ブース」
そう言って、私のムカつく弟が私の背中を蹴って走り去った。
「こんの…ガキ…絶対許さんっっ!プラモ絶対へし折ってやるからねっっっ!」
私は、走り去る弟を外まで追いかけて、そのムカつく背中に向かって叫んだ。
ハァハァハァ…ただでさえ寝不足なのに…
体力つかわせんじゃないわよっっ!
「おい、邪魔…」
さっきから、何なのよっっ!
そう思って後ろを振り返ると、そこには朝から眩しいくらいに爽やかな男が私を見下ろしていた。
「…恵太」
今…邪魔って言いました?
私の幼稚園からの腐れ縁の幼馴染…
上谷 恵太(かみや けいた)
家が隣同士で、家族ぐるみで仲がよくて、お互いの家を行き来さしているせいで、男子に縁遠い私には唯一の一番身近な男子だ。
だけど、彼は私の弟並に性格が悪い…そしてとにかく私に、昔からずっと意地悪だ。
せっかく同じ高校なんだから、一緒に楽しく登校してみたいなぁと思うけれど、それは夢のまた夢。
だって私は…多分…彼に嫌われているから。
「あ、おはようっ…」
私は慌てて明るい声を出して恵太を見た。
「よく、毎度毎度…姉弟喧嘩するよなぁ…しかもお前のほうが、3つも上なのに…女らしさの欠片もないなっ。」
朝からチクチク…刺さります…
話題を変えなくては…
「あっ、そういえば…今日のテストっっ…」
ハッッダメだって…その話はっ。
「テストがなんだよ?」
「アハハ…何でもないっ!」
恵太は毎度、成績上位者っっ。
また、バカにされるっ。だって…私は、一夜漬けさえも…失敗した身。
「あっ、早く行かないとバスに乗り遅れちゃうっ!」
そう言って、横断歩道をダッシュで渡ろうとした時…
ガシッッ
私の背中のリュックを思いっきり掴まれた…
「えっ…」
その瞬間…私の目の前をトラックが猛スピードで走り去った。
ヒッッ…ヤバッッ
死ぬところでした…。
「………ハハ…ごめん…」
「お前なぁ…本当…バカ」
「す、すみません…」
そう言った彼の顔をこっそりと見上げると、大きなため息をついていた。
それと一緒に…
ポツリと呟いた言葉が微かに聞こえた。
「…寝不足なんだから、大人しく歩いてろよな。」
え…
何で…私が寝不足って知ってるの…?
「え…何で?」
「は?」
「だから…何で知ってるの?」
「そりゃ…そんな深いクマつくってれば誰でもわかるだろ…」
「あ、そうですよね…」
なんだ…
そうだよね…私が徹夜してたことを知ってたのかななんて思ってしまった…
「どうせ…漫画読んでて、範囲終わらないって泣いてたんだろっ(笑)」
グッッ…なぜわかる?もしかして見てた??
「はぁ?!な、なわけないでしょ…完璧だし」
「あ、そっ…せっかく、山を教えてやろうかなって思ったのに…」
「えっっ!」
そう言った彼の顔を見て、私は思い切り後悔した。
ヤバイ…またパシられる。
「しょーがねーな。」
恵太の不敵な笑み…。
こんな時は、本当に最悪だ。
「いいっ、私…大丈夫だからっ。」
そう言い捨てて、停留所に停まったバスに勢いよく乗り込んだ。
私の後ろをニヤニヤしながら追いかけて乗り込む恵太。
「本当にいいのかぁ?このままだと、また最下位決定なんだろ?おばさんに、スマホ取り上げられるぞ…?そしたら、お前が好きな携帯漫画見れないぞ?それでも…いいのか?」
私の弱点…よくご存知で…。
どうして…私はいつもこんなについてないの?
「…わかったわよ…じゃあ…教えて。」
「はぁ…?その態度じゃ無理だな。」
この性格っっ!本当に意地が悪いっっ!
「お、…教えてください。」
「お願いしますは?」
「教えてください、お願いします!!」
「じゃあ、メロンパン、焼きそばパン、コーヒー牛乳とプリンな。」
「はい…?」
「昼休みに学食で待ってるからなっ。」
ガクッ…
「わかった…」
「じゃあ、ほらっ。ありがたく頂戴しろっ。」
そう返事をして肩を落とす私の手に恵太はノートの束を押し付けた。
「…ありがとうございます」
ズシッ…なんか嫌な重みだわ…
さっそく、ノートを広げると英語、現国、公民が綺麗な字でわかりやすくまとめてあった。
「…す、すごい」
さすが…秀才は、ノートのとり方までスゴイのね…
学校に到着するまであと30分…
とにかく、1校時の公民を暗記するしかない…
頑張らないとっっ。
…………………
「…おいっ」
「えっ?」
「バス、着いたぞっ。」
「はっっ…」
しまった!寝てしまったっっ!
「お前…よだれ垂らして寝てたぞっ。」
「えっっ」
慌てて口を拭うと、口によだれが付いていた…
そして、ノートにも…
や、やばい…
「最低だな?」
恵太の呆れた視線が私に突き刺さる。
「…ご、ごめん」
恥ずかしすぎて死んでしまいたい…。
バスから降りると学校まで10分歩くこの距離が、こんなに長いと感じたことはない。
つ、ツライ…
私…寝てたの?
もう、完璧アウトじゃん…っ。
「あのさ…ノートごめんね」
「…本当に…ありえないよなっ。」
返す言葉もありません…。
「…あ、この部分だけコピーして、貼り直すから…っ。」
そう言って恵太の顔を見上げる。
「…フッ」
え?
「…いい」
今…笑った?バカにしました?
人が…真剣に謝ってるのにっ。
「…じゃあ…すみませんでした。」
「…あ…そうじゃなくて。」
彼が呟くように言った言葉はもう、私には聞こえなかった。
それからは、恵太の方を見ないようにした。
…いつも思うけど、何で恵太は朝練で部活がある日を除いて私と一緒に登校しているんだろ?
会話が弾むわけでもないし…。
しかも大抵…私に意地悪だし。
だから、私はできれば一人で気楽に登校したい。
それに…憂鬱な原因の最大の理由…それは
「あ、上谷くんだっっ!」
「上谷くん、おはよ〜う」
「きゃあ、カッコいいっっ」
朝から黄色声。
女子からの熱い眼差し…
そう…彼はめちゃくちゃモテている。