記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
「はい、私共も懸命にシュティーナの捜索をしていますが一向に足取りがつかめず…」
そう親父がモゴモゴとしながらお爺様に言う。
お爺様は眉間に皺を寄せ、怒りを露わにしている。
「早く探し出せっ!シュティーナに何かあったら貴様ら全員処刑だ!」
その言葉に皆、ゾッとした。
この人なら本当にやりかねない…。
そうわかっているから。
騎士達は再び捜索に隣街の方へと趣いた。
「……どこにいるんだよ、シュティーナ」
やはりあの晩が原因だよな?
あの晩からシュティーナは姿を消したのだからそうだろうな。
…でも、シュティーナがそんなことする子だとは思わない。
あいつは優しいやつだから。
『お兄様』
シュティーナが行方不明になってから俺は目を閉じる度にシュティーナが俺を呼んでいるのが映る。
あの日から毎日…ずっと、シュティーナが俺を呼んでいる。
「はぁ…重症だな」
俺はシュティーナに王位を奪われてしまうのが怖かった。
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