記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
「お父さ…」
お父様と言おうとしたがそれは叶わなかった。
ボロボロの私の体をお父様は頬を叩き、突き飛ばした。
私は咄嗟のことで受け身を取り損ね、手を思いっきりついてしまった。
「…っ!」
先程の傷も完璧には治せなかった。
激痛が走った。
…今度は私、何をしてしまったの?
「お前はなんてことをしてくれたんだ!!」
「な、なんのことですか…お父様」
私には心当たりがなかった。
嫌…あるとしたら勉学や剣術、それから魔法とかかな?
そう考えているとまた頬を叩かれた。
「…っ?」
お父様はひどくお怒りだった。
私は手足が震えた。
私は何をしてしまったのだろうか?
心当たりもなく、ただこの嵐が過ぎ去るのを心から祈るばかりだった。
「お前は学園の生徒を刃物で切りつけたそうだな」
私はお父様の言葉に目を見開いた。
「私は…やっておりません!」
そんなことやっていないから。
すぐに否定したがお父様のお怒りは治まらなかった。
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