紅蓮の炎は心を壊す
「俺、ヒノカグツチノカミ。長いからヒノカグって呼んでくれ。お前、名前は?」

「えっと、あたしは紅葉と言います。ヒノカグ様……?」

人の言葉を話せる炎など、両親が幼い頃に聞かせてくれた昔話にも登場したことはなかった。紅葉が首を傾げていると、ヒノカグは語り出す。

「俺ね、火の神様なの。日本には八百万の神って言って、火には火の神様が、水には水の神様が、木には木の神様がいるんだ。そんで、俺ら神は定期的に集まって人間をどうやって治めていくか会議をするんだけど、俺寝坊しちゃったんだよね。それに怒った付喪神にただの炎に姿を変えられちゃってさ〜」

明るく、まるで友達と話すような口調でヒノカグは言う。紅葉が頭にクエスチョンマークを浮かべながらも相槌を打っていると、ヒノカグは突然飛び上がり、紅葉の上へと落ちてくる。

「ヒノカグ様!?」

何とか紅葉は両手でヒノカグを受け止めることができた。炎に触れているというのに、何故か熱くない。犬や猫に触れているような熱しか紅葉の手のひらには伝わってこないのが不思議である。
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