見た目九割~冴えない遠藤さんに夢中です~
翌日夕方に待ち合わせ場所にやってきた遠藤は、いけてる方の遠藤だった。それは遠藤なりの配慮だと愛美は理解した。
二人で愛美の家に向かう。遠藤は緊張しているのかと思ったが、どちらかといえばわくわくしているように見えた。
「ただいま」
愛美が玄関を開けて言うと、両親が出迎えた。
「初めまして、遠藤と言います。愛美さんとお付き合いさせていただいています」
遠藤はハキハキと挨拶した。
「わざわざ挨拶に来てくれて嬉しいよ。ありがとうね」と笑顔で父が言うと、「僕もお会いできて嬉しいです」と遠藤が返した。
「さあ、こんなとこじゃなんだから、中で一緒に飯食おう」
これ程嬉しそうな父の顔を目にするのは初めてだった。
「爽やかでお洒落だし、イケメンねえ」
母が遠藤と愛美を交互に見ながら言った。すると遠藤が返す。
「いえ……僕は全然そんなんじゃないんです。実は今日、朝からデパートに行ってきたんです。『マネキン買い』というのをしてきました。本当はお洒落にも疎くて無頓着で……」
「そうなの?」
母がクスッと笑った。
「でも、愛美さんだけはそんな僕でもいいと言ってくれて……」
母が遠藤に微笑むと、父も目を細めていた。
「会社の面接の時に、初めて愛美さんを見かけたんです。僕は中途採用なんで愛美さんより年は上なんですけど、同期なんです。みんな椅子に座って順番を待ってるのに、愛美さんは一人の女性と一緒に床を這うようにして長い間探し物をしてて……」
「ああ……」
思い出したように愛美が呟く。
「話を聞いていたら、どうやらもう一人の女性が大事なピアスを落としたとかで……それを愛美さんが一緒に探してあげてたみたいなんです。周りの人はみんな自分のことで必死で、見向きもしなかったのに、愛美さん一人だけが。それで……しばらくしてから見付かったんです。『あった!』って大きな声がして。見ると、愛美さんが指で摘まんだそれを見つめて凄い嬉しそうな顔してたんです。自分のことのように。それを見て、こんな人が傍にいてくれたら幸せだろうな、ってその時思ったんです」
──全然知らなかったよ。そんな風に見てくれてたこと。
「まあ言ってる僕も、何も出来ずに見てるだけだったんですけど。僕の場合は、面接のことで頭がいっぱいと言うより、愛美さんに釘付けだっただけなんですけどね」
遠藤は照れ笑いを見せながら続けた。
「それから五年もかかっちゃいましたけど、でも僕を選んでくれて、すごく幸せです」
「やだぁ、真剣な顔でそんな恥ずかしいことよく言えるね」
言いながら、やっぱり好きだな、と愛美はしみじみ思った。
「あの時の女の子ね、博子ちゃんだよ」
愛美が言う。
「ええ!? そうだったんだ!」
「で、博子ちゃんが探してた大事なピアスをプレゼントしたのは、旦那さんだったんだよ。旦那さんね、学生時代から博子ちゃんのこと大好きだったんだって」
遠藤は、見えないようにテーブルの下で愛美の手を握った。
二人で愛美の家に向かう。遠藤は緊張しているのかと思ったが、どちらかといえばわくわくしているように見えた。
「ただいま」
愛美が玄関を開けて言うと、両親が出迎えた。
「初めまして、遠藤と言います。愛美さんとお付き合いさせていただいています」
遠藤はハキハキと挨拶した。
「わざわざ挨拶に来てくれて嬉しいよ。ありがとうね」と笑顔で父が言うと、「僕もお会いできて嬉しいです」と遠藤が返した。
「さあ、こんなとこじゃなんだから、中で一緒に飯食おう」
これ程嬉しそうな父の顔を目にするのは初めてだった。
「爽やかでお洒落だし、イケメンねえ」
母が遠藤と愛美を交互に見ながら言った。すると遠藤が返す。
「いえ……僕は全然そんなんじゃないんです。実は今日、朝からデパートに行ってきたんです。『マネキン買い』というのをしてきました。本当はお洒落にも疎くて無頓着で……」
「そうなの?」
母がクスッと笑った。
「でも、愛美さんだけはそんな僕でもいいと言ってくれて……」
母が遠藤に微笑むと、父も目を細めていた。
「会社の面接の時に、初めて愛美さんを見かけたんです。僕は中途採用なんで愛美さんより年は上なんですけど、同期なんです。みんな椅子に座って順番を待ってるのに、愛美さんは一人の女性と一緒に床を這うようにして長い間探し物をしてて……」
「ああ……」
思い出したように愛美が呟く。
「話を聞いていたら、どうやらもう一人の女性が大事なピアスを落としたとかで……それを愛美さんが一緒に探してあげてたみたいなんです。周りの人はみんな自分のことで必死で、見向きもしなかったのに、愛美さん一人だけが。それで……しばらくしてから見付かったんです。『あった!』って大きな声がして。見ると、愛美さんが指で摘まんだそれを見つめて凄い嬉しそうな顔してたんです。自分のことのように。それを見て、こんな人が傍にいてくれたら幸せだろうな、ってその時思ったんです」
──全然知らなかったよ。そんな風に見てくれてたこと。
「まあ言ってる僕も、何も出来ずに見てるだけだったんですけど。僕の場合は、面接のことで頭がいっぱいと言うより、愛美さんに釘付けだっただけなんですけどね」
遠藤は照れ笑いを見せながら続けた。
「それから五年もかかっちゃいましたけど、でも僕を選んでくれて、すごく幸せです」
「やだぁ、真剣な顔でそんな恥ずかしいことよく言えるね」
言いながら、やっぱり好きだな、と愛美はしみじみ思った。
「あの時の女の子ね、博子ちゃんだよ」
愛美が言う。
「ええ!? そうだったんだ!」
「で、博子ちゃんが探してた大事なピアスをプレゼントしたのは、旦那さんだったんだよ。旦那さんね、学生時代から博子ちゃんのこと大好きだったんだって」
遠藤は、見えないようにテーブルの下で愛美の手を握った。