見た目九割~冴えない遠藤さんに夢中です~
土曜日、約束の時間より三十分も早く着いた愛美だったが、既に遠藤の姿があった。

「ごめんなさい! 待たせてしまって」

「約束の時間はまだまだ先だよ。俺が早く来すぎただけなんだ」

遠藤は今日もお洒落な服装で、髪型もビシッと決まっていた。
そして、眼鏡は掛けていなかった。

「愛美ちゃん、今日のワンピース可愛いね」

「遠藤さんも素敵ですよ」

言ってから何だかおかしくて、二人して吹き出した。

カフェで少し休憩してから、遠藤が予約してくれていたレストランへ向かった。

如何にも高級そうな雰囲気のいい店で、愛美は緊張していた。

「何か緊張するよね。俺こんなとこ来たことないし」

愛美が思っていたことを、遠藤は率直に口にした。
それを聞いて愛美の気持ちは解れ、その後は気負わず二人で食事を楽しんだ。少しお酒が入ったせいか、遠藤とのぎこちなさがいつもよりいくらか和らいでいるようにも思えた。

しばらくすると、聞き覚えのある声がした。嫌な予感──。

「遠藤さん? やっぱり!」

会社の女子社員だった。

「あ、曽根崎さんも一緒だー! じゃあみんなで一緒に食事しましょうよ。向こうに友達もいるんです」

と嬉しそうに言った。

「ああ……悪いけど、今日は曽根崎さんと約束して来たんだよね。彼女と二人がいいんだ」 

遠藤はきっぱりと断った。
それが嬉しくて涙が溢れそうになり、愛美は慌てて化粧室に立った。
気持ちを落ち着かせてから席に戻ったが、遠藤に気付かれただろうか。

今まで遠藤に見向きもしなかった女子社員が執拗に遠藤に言い寄るようになってから、愛美は焦りを感じていた。
こんなことなら冴えない遠藤のままで良かった、などと愛美の心におかしな感情まで湧いていた。
運ばれてきたデザートを食べながら、遠藤に気持ちを伝えようか、と悩んでいた。
愛美の表情の曇りに気付いたのか、デザートを食べ終えると「そろそろ出ようか」と遠藤が言った。

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