見た目九割~冴えない遠藤さんに夢中です~
ホテルの部屋に入った途端、遠藤は箍が外れたように、愛美にキスを浴びせた。
お預けを食っていた愛美も限界で、遠藤の首に腕を絡めて、もっと、とせがんだ。
「ヤバイ」と遠藤が吐息と共に漏らし、更にキスが激しくなる。
しばらくすると遠藤がゆっくりと体を離した。遠藤が少し屈むと同時に愛美の身体が宙に浮く。遠藤は愛美を軽々と抱き上げベッドに運んだ。

「待って……シャワー浴びてから」

愛美が言うと、遠藤ははにかんで頷いた。

先にシャワーを済ませた遠藤の横に、バスローブ姿の愛美が腰を下ろすと、遠藤がそわそわし始めた。緊張しているのか、と思っていると、遠藤の口からまさかのひと言が飛び出した。

「バスローブの下って……パンツ履くもん?」

「え、やだー。普通そんなこと聞く? 自分で考えてよ。ムードぶち壊し……」

愛美は呆れたような顔を見せた。

「ごめん。俺、こういうとこ来ないし、バスローブなんて……」

口籠って遠藤は俯いた。
本当は遠藤のそんな所も好きで好きで堪らなかった。
シャワーを浴びた後、履くのか履かないのか、そんなことを悩んでいたのかと思うと、愛おしくて仕方がなかった。
愛美は遠藤にすり寄り、顔を覗き込んで言った。

「見ればわかるよ」

遠藤は顔を上げて愛美を見つめた。
愛美がバスローブの胸元を少し開くと、遠藤がちらっと目を遣り頬を赤らめながら言った。

「あ、そういうこと……」

けれども、その後の遠藤は愛美の想像を遥かに越えて、いろんな意味で『男』だった。
バスローブの下に隠されていた引き締まった身体と濡れた髪からは、色気が溢れ出していた。
手慣れた感じはないのに、愛美の顔色を窺いながら探り探りなところが逆によく、遠藤の表情からは余裕さえ窺えた。そしてたっぷり時間をかけて甘やかされた愛美は骨抜きにされた。

徐々に表情に余裕がなくなってきた遠藤は、吐息混じりに一度だけ「愛美」と呼んだことを覚えているのだろうか。


「愛美ちゃん可愛すぎ……」

愛美は髪を撫でられ、遠藤の腕の中で余韻に浸っていた。

「遠藤さん?」

「ん? てか愛美ちゃん、もう『遠藤さん』はやめない?」

「じゃあ……雅史だから、まー君?」

「何でもいいよ」

「いや、まー君って顔じゃないよね……」

「酷っ!」

「……冗談だよ! まー君?」

「ん?」

「うちの両親に紹介したいんだけど……明日は忙しい?」

「え!? 愛美ちゃんのご両親に会わせてもらえるの?  すげぇ嬉しい!」

さっきまでの『男』だった遠藤ではなく、いつもの遠藤に戻っていた。

「本当? 良かった!」

「あ……俺、どっちで行けばいい?」

「どっちって……?」

「愛美ちゃんが好きになってくれた俺か、いけてる方の俺」

言ってから遠藤は俯いて照れていた。

──可愛すぎる……

「どっちでもいいよ。まー君に任せる」

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