ブルー・ロマン・アイロニー
「言っておくが俺には後ろにも目がついている」
「えっホント?」
「うーそ」
語尾にハートを付けてお手本のようなウインクをしたノアはひらりと手を振った。
「あくしないと置いてくぜー」
「鍵持ってるのはわたしだし!」
「いまは俺だよヴァーカ。鳥頭」
一発殴ってやろうとその背中を追いかけたわたしに、ノアも走り出す。
家に帰り着いた頃には(わたしだけが)まるで生まれたての子鹿のようになっていた。
次の日は始業式だったこともあって早く寝ることにしたんだけれど、この日はいつもより寝付きがよかったのはいうまでもない。