ブルー・ロマン・アイロニー
「あの」
女の子はびくっと大げさに肩を揺らした。いきなり話しかけてしまったからかもしれない。
振りかえった女の子はどこか引きつった表情でこちらを伺っている。
「あの、わたし、後ろの席の藤白あまりです……」
よかったら仲良くしてね、までとても言い切ることはできなかった。
どうみても女の子はわたしと関わりたくなさそうだったから。
聞き取れないほど早口で名前をつげたあと、彼女は周りの目を気にするように席を立って、こちらを見ていた数人の女子たちのところに加わった。
走り寄った彼女がなにかを言って、周りの子たちが慰めるように、よしよし、とその頭を撫でる。
そしてこちらを見る目にはものすごく見覚えがあった。
好奇と警戒が入り混じった目。
「あーらら」
ノアの憐れむような声も遠くに聞こえてしまうほど、わたしはがく然としてしまった。