ブルー・ロマン・アイロニー
アンドロイドに搭載されている集音器の効果はすさまじい。
普段は絞っている範囲を広げることで、学校全体のどんな些細な呟きも噂話も拾うことができる。
そんなノアが言うには、どうにもわたしの噂が一人歩きしているらしい。
1年の終わりにカースト上位の子たちと大喧嘩して、めちゃくちゃに言い罵って、さらには人相の悪いアンドロイドを使って脅した、と。
鯛もびっくりのでっかい尾ひれをつけた噂は、どうやら春休みのときにはすでに学年中に広まっていたらしく。
『今日、俺が校内で耳にしたかぎりではこんな感じだが。もちっと聞くか?』
『もういい……』
『そう落ち込みさんな。まだ起死回生の余地はある』
『わたしいま死にかかってるんだ……』
『あのなぁ、人生ってのはうまい具合に進んでいくのよ。あれこれ気を揉んだってしかたねぇ。ここは一丁、どーんと構えとけよ!』
今日の放課後に交わしたノアとの会話を思い出す。
そんなこと言われてもと思う反面、一理あるとも思った。
アンドロイドが人生を語ることの違和感はあるものの、どうにもならないことを気にしすぎるのも体に悪そうだ。