ブルー・ロマン・アイロニー


「ノア」


意味もなくその名前を呼んでみる。もちろん反応はない。

どうせ今夜も眠れないんだと思うと、悲しいようなほっとしたような気持ちになる。


孤独な夜の空気は人を大胆にさせることをわたしは知っていた。

どうせすることもないし、眠くなるまでノアのことを観察してやろうと思って、わたしはソファまでずるずると這い寄った。


ちょっと前まで壁にもたれ掛かって寝ていたノアに、ソファを使うように言ったのはわたしだった。

善意からじゃないし、ノアのためを思ってでもない。

ただ、あまりにも人間に似過ぎていた。


壁にもたれ掛かって静かに目を閉じているその姿は、もはや寝ている成人男性となんら変わりなかった。

見ているこっちの体が痛くなってくる。


向こうからしたらなんてことないんだろうけれど、夜になるとぽつんと空いているソファも有効活用したかったから、わたしはソファを薦めた。


ノアは喜ぶでもなく、嫌がるでもなく、命令に従うロボットのように「わかった」とだけ言った。

いや、ロボットのようにじゃなくて、ロボットなんだけど。

いつもが人間くさいだけに、たまにこういう無機質な反応をされると調子が狂う。


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