ブルー・ロマン・アイロニー
……それにしても。
こうして見ると、別にそこまで怖がるほどの顔じゃないと思うのはわたしだけ?
たしかに強面ではあるけれど、よくよく見れば目鼻立ちは整っているほうだと思う。
切れ長の涼しげな目元に、案外よく笑う口元も。
アイドル顔ではないものの、さして悪くないのでは?と最近のわたしはこっそり評価している。
男前、って。いまなら惣菜屋さんの言ったことがわかる気がした。
それもこれもノアの素性がわからないのが悪いのだ。
本当に体のどこかに実験用の数字が記されていないか。
それを確認しているうちに、図らずもノアのことをよく観察するようになった。
前まではおぼろげだったその姿形が、いまでは目をつぶっても思い描けるようになっていた。
いいことなんだか悪いことなんだか。
わたしは息を長く吐きながら、もう一度ノアの顔に目を向けた。
「ん?……、うわっ!」
なんだか違和感を覚えてぐっと近づいて見ると、瞼の下に隠れていたはずの双眸がまっすぐにこちらを見つめていた。
びっくりして悲鳴をあげ、尻もちをついて後ずさる。
ノアは寝転がったまま、すうっと目を細めた。