ブルー・ロマン・アイロニー


「お前、あまり……なんつー厭らしい目で……」

「ちがっ……違う!なんで、起きてたなら言ってよ!」

「こうも熱烈に見られちゃ、言うもんも言えねえだろ」

「っ、っ……!」


言いたいことがふつふつと沸いてくる。

それが一気に出てこようとして、結局すべて喉でつかえてしまった。

声にならない声を漏らすわたしに、ノアが「で?」横向きになってその腕で頭を支える。



「なーにしてんだよ。良い子はもう寝る時間だぞ」


だったらわたしの寝る時間はまだもっと先だよ。

そんな子供じみた屁理屈をアンドロイド相手にこねる気もなく、わたしは黙って自分のベッドに潜り込む。


いつもそうだ。

真似しちゃ駄目だよって言われるのも、もう寝ようねって言われるのも。

いつだって気にかけられるのは良い子たちばかりだった。


もちろん、いまとなってはそういう意味ではないことはわかっている。

だけど、小さい頃はよく不思議に思っていたんだ。


両親と一緒に住んでいた頃にかけられた言葉も、伯母さんの家に住んでいた頃に観たアニメのテロップも。

大人たちが、そしてヒーローが助けてくれるのは、良い子だけだった。


じゃあ、悪い子は?


迷惑をかけてばかりで、大人に助けてもらえないわたしみたいな悪い子は、どうすればいいの?

誰の助言を頼りにすればいいの?って。

小さいながらに混乱したっけ。


< 117 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop