ブルー・ロマン・アイロニー
「お前、あまり……なんつー厭らしい目で……」
「ちがっ……違う!なんで、起きてたなら言ってよ!」
「こうも熱烈に見られちゃ、言うもんも言えねえだろ」
「っ、っ……!」
言いたいことがふつふつと沸いてくる。
それが一気に出てこようとして、結局すべて喉でつかえてしまった。
声にならない声を漏らすわたしに、ノアが「で?」横向きになってその腕で頭を支える。
「なーにしてんだよ。良い子はもう寝る時間だぞ」
だったらわたしの寝る時間はまだもっと先だよ。
そんな子供じみた屁理屈をアンドロイド相手にこねる気もなく、わたしは黙って自分のベッドに潜り込む。
いつもそうだ。
真似しちゃ駄目だよって言われるのも、もう寝ようねって言われるのも。
いつだって気にかけられるのは良い子たちばかりだった。
もちろん、いまとなってはそういう意味ではないことはわかっている。
だけど、小さい頃はよく不思議に思っていたんだ。
両親と一緒に住んでいた頃にかけられた言葉も、伯母さんの家に住んでいた頃に観たアニメのテロップも。
大人たちが、そしてヒーローが助けてくれるのは、良い子だけだった。
じゃあ、悪い子は?
迷惑をかけてばかりで、大人に助けてもらえないわたしみたいな悪い子は、どうすればいいの?
誰の助言を頼りにすればいいの?って。
小さいながらに混乱したっけ。