ブルー・ロマン・アイロニー
「じゃあ自己紹介、よろしく」
すっとひらかれた転校生の薄い唇に、みんなの視線が集まった。
「成瀬・L・ルーカス」
金髪だ。
第一印象はそれだった。
日の光を受けると、とろりとハチミツが溶けるように、さらに淡い金色になる。
それがきれいで、とても綺麗で、思わず目を奪われた。
「うぉーい、もうちょいなんかないんか」
先生に促されて金髪の彼がぶっきらぼうに話したのは、ネバダ州からはるばる渡米してきたこと、二重国籍のクォーターであることだった。
そこで先生が「質問は?」と聞くと、待ってましたと言わんばかりに次々と質問が飛び交った。
クラスメイトたちからの質問に淡々と答える彼に、女子たちがヒートアップしていくことに気付いた。
「格好よくない?」「うん、めちゃタイプ」「あの桃花眼、性癖に刺さった」
桃花眼、と聞き慣れない単語をこっそりスマホで調べた。『二重まぶたで、睫毛が長くて切れ長で、色気のある瞳』。
わたしは我関せずと大きな欠伸をしていたノアを見る。
「なんだ、おい」
それをいうならノアだって惹きつけられるような瞳をしているのでは?
柔らかみのあるグリーンアイの彼とは違って、闇のように真っ黒な色ではあるけれど。
ちゃんと正面から見たことはないからわからないけれど、たぶんそんな感じだろう。
張り合おうとしている自分に申し訳なさと恥ずかしさがまぜこぜになる。
人間とアンドロイドを比べるなんて、成瀬くんに失礼だよね。「あまりお前いま失礼なこと考えてるだろ、おい」