ブルー・ロマン・アイロニー


ひとりで学校に行くのひさしぶりだなぁ、とか。

眠いなぁ、とか。

台風あんまり酷くならないといいけどなぁ、とか。


そんなことを思いながら電車に揺られ、学校に着いて上履きに履き替える。


教室の前まで来たときだった。

ぱちんとシャボン玉が弾けるように、昨日の出来事を思い出したのは。


そうだ、ルーカスくんのこと忘れてた。

いや、忘れてたっていうか、あまりにも刺激が強すぎて記憶が飛んでしまったというかなんというか。

うん、忘れてたんだけど!

さてどうしよう。



「入らないのか?」

「ひぇっ……!」


まだ聞き慣れないその声に、なんとなくいやな予感がして。

錆びたロボットのように、ぎぎぎ、と振りかえる。

案の定、そこに立っていたのはルーカスくんだった。


彼もいま来たばかりなのか、肩からはずっしりと重そうなスクールバッグを提げていた。

あ、ちゃんと置き勉せずに持ち帰ってるんだ……偉いな。


わたしは自分のぺたんこなバッグを少し恥ずかしく思った。

そして視線をするすると足元に下げる。

どうしよう、目が見られない。

挨拶ってどんな感じでするんだっけ。


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