ブルー・ロマン・アイロニー
ルーカスくんが乗る電車のほうがあとに到着するらしく、わたしの電車が出発するまで見送ってくれることになった。
「なんか、ごめんね。わざわざホームまで来てもらっちゃって」
「いい。好きでやってることだから」
「……うん」
電車はすぐにやってきた。
わたしはそれに乗ると、後ろを振りかえってばいばいと手を振った。
少し子供っぽかったかなと恥ずかしくなって、照れ隠しのように前髪をいじる。
発車ベルが鳴ってドアが閉じていく──そのときだった。
ひらり、まるで迷いこんだ猫のようにルーカスくんが電車に飛び乗ってきたのは。
見計らったかのように電車がゆるやかに動き出す。
帰宅ラッシュをとうに過ぎているからか、この車両に乗っているのはわたしたちだけだった。
ぽかんとしているわたしの横にルーカスくんが並んだ。
「やっぱり家まで送る」
「え、え、もう大丈夫だよ……?ほら、わたし傘買ったし……」
さっきコンビニで買ったばかりのビニール傘を掲げるけれど。
次の瞬間わたしは顔を真っ赤に染め上げて、傘を下ろすことになる。
だって、そんなことを言われたら敵わない。
期待するなってほうがどうかしてる。
────まだもう少し一緒にいたい、だなんて。