ブルー・ロマン・アイロニー


……テーマパークについたわたしたちは思う存分に遊んだ。

お父さんとジェットコースターに乗って、お母さんの手作りのお弁当をみんなで食べて、日が暮れるまで遊んだ。


楽しかった。すごく、楽しかった。

わたしはなんて幸せ者なんだろうって、嬉しくて、何度も泣きそうになった。

それが、家族3人で過ごす最後の時間だって気付かずに。


事故が起きたのは帰り道だった。

寝ててもいいよって言われたけど、わたしは興奮して眠れなかった。

今日あったことを、楽しかったことを運転席のお父さんと助手席のお母さんに喜んで話していた。


そんなときだった────道路に、アンドロイドが飛びだしてきたのは。


もちろんそのときはアンドロイドだって気がつかなかった。あとから教えてもらったの。

そのアンドロイドはなにかを抱えていて、こちらをまっすぐ見つめていた。


わたし、目があったの。そのアンドロイドと。


あっ、って思った。ぶつかる、って。


だけど車は、アンドロイドにはぶつからなかった。



お父さんたちはね、本当にアンドロイドを愛していたんだよ。


そして本当に、アンドロイドを生きているものとして扱っていた。


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