ブルー・ロマン・アイロニー


だから、とっさにハンドルを切ってしまったんだと思う。

……アンドロイドを避けるようにして。


ハンドルを切った先は、対向車線だった。


そこから先のことはよく覚えていないの。

気付いたらわたしは病院のベッドのうえ。



────おと……さ、おかあ……さん、どこ……?


ベッドを囲むようにたくさんの人がいた。だけど知らない顔ばかり。

お医者さん、看護師さん、知らない大人たち。

わたしの知っている人、わたしの──家族は、そこにはいなかった。



結局、わたしは最後までお父さんとお母さんに会えなかった。

遺体すらも見せてもらえなかった。


人間はアンドロイドのように鉄でできていないから。人間だってある程度は壊れても直すことができる。

だけどふたりはもう、修復不可能だったらしい。わたしに、子供に見せられないほどに。


空に昇っていく白い煙。


それがわたしが最後に見たお父さんとお母さんだった。


< 170 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop