ブルー・ロマン・アイロニー
だから、とっさにハンドルを切ってしまったんだと思う。
……アンドロイドを避けるようにして。
ハンドルを切った先は、対向車線だった。
そこから先のことはよく覚えていないの。
気付いたらわたしは病院のベッドのうえ。
────おと……さ、おかあ……さん、どこ……?
ベッドを囲むようにたくさんの人がいた。だけど知らない顔ばかり。
お医者さん、看護師さん、知らない大人たち。
わたしの知っている人、わたしの──家族は、そこにはいなかった。
結局、わたしは最後までお父さんとお母さんに会えなかった。
遺体すらも見せてもらえなかった。
人間はアンドロイドのように鉄でできていないから。人間だってある程度は壊れても直すことができる。
だけどふたりはもう、修復不可能だったらしい。わたしに、子供に見せられないほどに。
空に昇っていく白い煙。
それがわたしが最後に見たお父さんとお母さんだった。