ブルー・ロマン・アイロニー
「……それからわたしは、伯母さん夫婦に引き取ってもらった。まあ……伯母さんたちはわたしのこと、家族だなんて思ってないだろうけど……実質、勘当されたようなものだし」
それにわたしも、伯母さんたちを家族だと思ったことなんてなかった。
わたしのほんとうの家族はもうこの世にはいない。
「天涯孤独ってやつ?あ、でもお金だけはあるんだよ。遺族年金。伯母さんにはお父さんたちの遺品を全部取られちゃったけど、これだけは使わずに取っておいてくれたみたい」
だからわたしの遺品はこのお金だけ。皮肉にもお父さんとお母さんの残してくれた遺品で、わたしは今日も生きている。
「あのときのアンドロイドはね、なんの罪にも問われなかったよ。アンドロイドに責任能力はないから、お父さんの過失ってことになっちゃった」
わたしはベランダから夜空を眺めたまま、隣にいるノアに笑ってみせた。
「……結局しょうがないんだよ、全部。……しょうがないの」
わたしがテーマパークに行きたいなんて言ったこと。
あのときアンドロイドが飛びだしてきたこと。
お母さんがそれに早く気づかなかったこと。
お父さんが対向車線にハンドルを切ったこと。