ブルー・ロマン・アイロニー
「偶然の不運が重なって起こった悲劇は、きっと誰のせいでもないんだろうね。お父さんのせいでも、お母さんのせいでも、……アンドロイドのせいでもない」
わたしは……どうかな。微妙だけれど。
わがままばかり言ってお父さんたちを困らせたことは事実。
あの日、疲れが溜まっていなかったら防げた事故かもしれない。
だけど、だけどね。
「どれだけ考えたって起こってしまったことは変わらない。しょうがないんだよ」
「……から」
「なんて?声ちっちゃい!」
「しょうがなく思ってねえから……そうやって泣いてんじゃねえのか」
……そこには触れないでほしかったんだけどな。
わたしはノアから顔を隠すように、ベランダの手すりに顔を伏せた。
もう夜も更けている。近所迷惑になるから大きな声は出せない。
わたしはなるべく抑えた声で、「……しょうがないって思わなきゃいけないんだよ」と呟いた。
「あのとき、先に飛びだしてきたのはアンドロイドじゃない」
そう、ヘッドライトに照らされたそれは……
「────人間の、女の子だった」