ブルー・ロマン・アイロニー


まだ5,6歳の小さな女の子。

追いかけてきたアンドロイドがその子のものか、そうじゃないかは知らない。

だけどすべてのアンドロイドにはとあるプログラムがされている。


そう。その危険を看過することによって、人間に危害を加えてはならない、というプログラムが。

なによりも優先しなくちゃいけないそれを、アンドロイドは従順に守っただけ。


女の子を抱きかかえたアンドロイドは歩道に戻ることも間に合わず、ただこちらを見つめていた。

じっと迫り来るわたしたちを、見つめていた。



「そのときの目がね、わたし今でも忘れられない」


打ち身や擦り傷こそはひどかったものの、わたしは身体的な後遺症を負わずにすんだ。

だけどわたしは、心に、後遺症を残してしまったの。



「アンドロイドの目を見ると、あの事故を思い出す。……怖くなっちゃったんだ、アンドロイドの目を見るのが」


今でもじっと見つめることはできない。

ノアの瞳も、ぱっと見で黒だということがわかるくらいで、それ以上は近づいて見つめられなかった。


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