ブルー・ロマン・アイロニー
「アンドロイドが殺したっていうのは、わたしが勝手にそう思ってるだけ。そうであってほしいと思ってただけ。お父さんとお母さんの死は誰のせいでもないの、本当は」
どこか遠くで鈴虫が鳴いている。
りいん、りいん、もの悲しいその音色は、それでも聴き入ってしまうほどに優しかった。
ぱたぱたと涙がこぼれ落ちる。
手すりに当たって、弾けては消えた。
「……ごめんね、長くなって。これで終わり。さ、もう中に入ろ──」
「終わってない」
ノアにつかまれた手を見つめる。
「お前の心が、まだ終わってないって言ってる」