ブルー・ロマン・アイロニー
「お?なんだリル?やんのか?これでも気ぃ遣ってやってんだぜ」
「リルって呼ぶな」
「ごめんルーカスくん、わたしが言っちゃったから……」
ルーカスくんのミドルネームのLはLil、小さいを表すものだということ。
それをわたしは教えてもらっていた。
前にクラスメイトが訊いていたときははぐらかしていたから、てっきり教えてもらえないと思った。
だけど、わたしもじつは興味があって。ひそかにずっと、気になっていて。
ダメ元で訊いてみたら、なんと教えてくれたのだ。(かなり迷ってはいたけれど)
昔は女の子のように小さかったから付けられたというこのミドルネームがあまり好きなれないらしい。
本人はもっとカッコいいミドルネームがよかったらしく、拗ねたように言うルーカスくんは、たしかにちょっと可愛く見えた。
このことを教えたのはわたしが初めてだったらしく、なるべく人に言わないでくれ、と頼まれていた。
わたしはもちろんだと約束をした。
だけど、どこから聞きつけたのか……いや、またわたしが無意識に言ってしまったんだろう。
いつの間にかノアに伝わってしまっていて、次の日の学校で開口一番に「リルくん♡」とルーカスくんに言ったときは滝のような汗が出たっけ。