ブルー・ロマン・アイロニー
「……それが瑠衣ちゃんの考えなら、わたしは否定しない」
瑠衣ちゃんの考えは、瑠衣ちゃんのものだから。
それはわたしがどうこう言っていいものでも、無理に変えるものでもない。
「だけどナナちゃんの想いまで否定するのは違うと思う」
瑠衣ちゃんがこれまで以上に大きく目を見開いた。
わたしが口答えをしたからか、ナナちゃんのことを知ったように語ったからか。
たぶん両方だろうなと思った。
「瑠衣ちゃんには瑠衣ちゃんの、ナナちゃんにはナナちゃんの考えや価値観がある。それは、どれだけ仲が良くたって、その人以外が侵していいものじゃないよ」
それだけ言って、わたしは背を向けた。
どんな罵声を浴びせられるかと内心どきどきしていたけれど、瑠衣ちゃんの追撃が迫ってくることはなかった。
廊下の角を曲がったところで、体の力が抜けたのかずるずると座りこんでしまった。
「はあぁ~~……怖かったぁ……!」
「お見事。いまのはさすがにカッコよかったぜ」
「瑠衣ちゃんまだいる?」
ひょいと廊下の先を覗いたノアは顔を出した「いやもういねえ」と教えてくれた。
それならちょっとここで休んでいこうと思って、わたしは立てた膝に顔をうずめたのだった。