ブルー・ロマン・アイロニー


「……それが瑠衣ちゃんの考えなら、わたしは否定しない」


瑠衣ちゃんの考えは、瑠衣ちゃんのものだから。

それはわたしがどうこう言っていいものでも、無理に変えるものでもない。



「だけどナナちゃんの想いまで否定するのは違うと思う」


瑠衣ちゃんがこれまで以上に大きく目を見開いた。

わたしが口答えをしたからか、ナナちゃんのことを知ったように語ったからか。

たぶん両方だろうなと思った。



「瑠衣ちゃんには瑠衣ちゃんの、ナナちゃんにはナナちゃんの考えや価値観がある。それは、どれだけ仲が良くたって、その人以外が侵していいものじゃないよ」


それだけ言って、わたしは背を向けた。

どんな罵声を浴びせられるかと内心どきどきしていたけれど、瑠衣ちゃんの追撃が迫ってくることはなかった。


廊下の角を曲がったところで、体の力が抜けたのかずるずると座りこんでしまった。



「はあぁ~~……怖かったぁ……!」

「お見事。いまのはさすがにカッコよかったぜ」

「瑠衣ちゃんまだいる?」


ひょいと廊下の先を覗いたノアは顔を出した「いやもういねえ」と教えてくれた。


それならちょっとここで休んでいこうと思って、わたしは立てた膝に顔をうずめたのだった。


< 190 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop