ブルー・ロマン・アイロニー



「ノア、わたしもう寝るけど」

「じゃあ俺も寝る」


その日の夜。

12時を回る前に寝床を整え終わったわたしはノアに声をかけた。

べつにわたしに合わせなくてもいいんだけれど、ノアももう休むらしい。


ベッドに潜り込んで部屋の電気を消そうとしていたわたしにノアは言った。



「あまりお前、最近眠れるようになってきたな?」

「え?あっ……たしかに、言われてみれば」


寝付きが良くなったわけじゃないけれど、気付いたら朝になっていることが多かった。前まではあんなに気にしていた睡眠のことが、今では言われるまで気付かなかった。

つまり、いい意味で気にしなくなっていたのだ。



「夜ごはんに睡眠導入剤とか入れてないよね?」

「入れるかバァカ。そりゃお前の自律神経が整ってきた証拠だよ」


自律神経が整うって、つまりどういうことだろう。

わたしがこくりと首を傾げていると、ノアがにやりと笑った。



「ストレスが解消されてきたってこと。上出来だ」

「ストレス……そっか、そっかぁ……」


ベッドのうえで仰向きになり、天井を見上げて思わず笑む。

そっか、わたしのストレス、解消されてるんだ。



「ノアのおかげだね」

「おー……まあ、そうだケド」

「え、もしかして照れてる?」

「照れてねえ!」


ノアに感情がないなんて嘘なんじゃないかって、たまに思ってしまう。それくらいノアの表情はころころと変わって、自分の気持ちに素直だった。


そんなノアと居ることが、固く閉ざしていたわたしの心を溶かしてくれたのかもしれない。


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