ブルー・ロマン・アイロニー
どこものクラスも終礼を終えたばかりなのか、廊下はたくさんの人やアンドロイドでごった返していた。
いつも思うけれど、生徒数(+アンドロイド)に校舎の大きさがあっていない。
わたしは何度も人の波にさらわれそうになりながらもルーカスくんに話しかける。
「ちょっと教室で時間潰せばよかったかな?」
「そうだな。はぐれないように手でも繋ぐか?」
「だ、大丈夫!平気!がんばってついてくから!」
嬉しいと、恥ずかしい。
とっさに恥ずかしいのほうに天秤が傾いたけれど、じわじわと持ちあがってくる。
というか、いまの、ちょっと可愛げがなかったかもしれない。
今から「やっぱり繋ぎたい」って言ったらなんて思われるかな……
なんて、悶々と考え事をしながら歩いていたからだと思う。
「あ、すみませ──」
誰かと肩がぶつかってしまったのは。
あわてて謝ろうとしたそのとき、もう一度、どんっと肩に強い衝撃が走った。反射的に、押された、とわかるほど悪意のこもった一押しだった。
完全に宙に浮いた体の向こうで、暗い目をした彼女が一瞬だけ視界の端に映った。
そうしてたしかに、こう聞こえたんだ。
────あんたのせいだ、と。