ブルー・ロマン・アイロニー


後ろ向きに倒れていくわたしの背後にあるのは、よりにもよって大階段だった。下まで踊り場はなくて、落ちたら確実に助からないような高さの大階段。わたしの運のなさはこんなときでも健在らしい。

流れていく景色が異様に遅くて、周りの反応がスローモーションのように目に映る。



とっさに、やだ、と思った。

いやだ、わたしは、まだ死にたくない。

怖い、いやだ、って。

さまざまな思いがわたしの中を駆け巡る。


だけどもう、どうしようもできない。


死を覚悟して、目をつぶったときだった。


落ちゆくわたしの体を、なにかが包みこんだのは。




────大きな衝撃が全身を襲った。


固いなにかが壊れるような、ものすごい音も。


< 195 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop