ブルー・ロマン・アイロニー
後ろ向きに倒れていくわたしの背後にあるのは、よりにもよって大階段だった。下まで踊り場はなくて、落ちたら確実に助からないような高さの大階段。わたしの運のなさはこんなときでも健在らしい。
流れていく景色が異様に遅くて、周りの反応がスローモーションのように目に映る。
とっさに、やだ、と思った。
いやだ、わたしは、まだ死にたくない。
怖い、いやだ、って。
さまざまな思いがわたしの中を駆け巡る。
だけどもう、どうしようもできない。
死を覚悟して、目をつぶったときだった。
落ちゆくわたしの体を、なにかが包みこんだのは。
────大きな衝撃が全身を襲った。
固いなにかが壊れるような、ものすごい音も。