ブルー・ロマン・アイロニー
サンドベージュの砂浜を素足で歩いていく。
ノアも真似をするように裸足になって、砂をさくさくと踏んでいた。
海が近づいてくるにつれて、潮の香りと波の音が増してきた。
ここ最近は機能していなかった五感が、わたしに海を感じさせる。
少し前を歩いていたノアが、足にぎりぎり波がかかるところで止まった。
わたしも同じように足だけを海につけて立ち止まる。
季節外れの海はそんなに冷たくはなかった。足先でぱしゃ、と弾いてみる。
ノアはじっと水平線を見つめながら、ぽつりと呟いた。
「そうか、海も青いのか」
「うん」
「やっぱり青は自由の色だな」
「自由の色?」
「ああ。空も海も、どこまでも続いてる。どこにだっていけるんだ」
たしかにノアはよく空をながめていた。授業中や、ふとしたときに。気づけば空を見あげていることが多かった。
それは単にすることがなくて、ぼんやりしているだけなのだと思っていたけれど。
もしかしたら、ノアなりに色々と考えていたのかもしれない。