ブルー・ロマン・アイロニー
「ノアは青色が好きなんだね。それは自由になりたいから?」
「……自由になりたかったんだろうな」
「え?ごめん、風の音でよく──」
「そういえば、フランスの国旗の青い部分。あれ、自由を表してるらしいぞ。どうだ、俺の言い分もあながち間違いじゃねえだろ」
うまくはぐらかされたような気がしないでもなかったけれど、よけいな詮索は野暮だと思った。
わたしはノアに合わせて、じゃあさ、と意地悪をするように言った。
「名前、ノアじゃなくてブルーとかのがよかった?」
「いや、ノアでいい」
ノアはそう言ったあと、すぐに言葉をつけ足した。
「今の言い方は違うな。俺はノアがいいんだ。初めてちゃんと考えてつけてもらった名前だから、お前が俺にくれたものだから、気に入ってる。────ノアのほうがずっといい」
「……そっか」
なんだかあらたまって言われると恥ずかしいな。
わたしは意地悪をいった自分に後悔しながら、ノアから海に顔をうつした。