ブルー・ロマン・アイロニー
下着にまで水が染みこんでいくのを感じながら、前髪から水滴をしたたらせながら。
海に落ちたわたしは、しずかに手で水を掬って、思いっきりノアに振りかけた。
「やめてって何度も言ったのに!このポンコツアンドロイド!」
「いいなあ、海は。……いいなあ。 また来ようぜ、マスター」
「……もー……しょうがないなあ。また今度ね」
「明日」
「明日!?……いいけどさあ」
「約束な」
ノアがわたしに手を差し出した。
わたしはそれにつかまるふりをして、もう一度水をかけてやった。
たのしそうに笑って水から逃れるノアを、わたしは後ろから追いかけた。
いいよ、明日も行こう。
何度でも遊びに来よう。
いろんなところで、いろんなことをしよう。
別れはいつだって突然におとずれる。
わたしとノアの約束が叶うことはなかった。