ブルー・ロマン・アイロニー
「えっと……どちら様ですか?」
次の日、わたしの家を訪ねてきたのは見知らぬ大人たちだった。
男の人もいれば、女の人もいる。若い人もいれば、白髪のおじいさんもいた。
「きみが藤白あまりさん、かい?」
「そう、ですけど……あなたたちは」
私たちはこういうものだ、と渡された名刺には、わたしでも知っているような名の知れたアンドロイド研究所の名前が記されていた。
「……それで、何の用でしょうか」
「ちょうど、一年前かな。私たちの研究所から一体のアンドロイドが逃げ出した」
どくんと心臓がいやな音を立てた。
研究所の人たちはそんなわたしに話を続ける。
「こんなこと前代未聞だから我々も秘密裏に探していたんだけどね。それでもなかなか見つからない。当たり前だ。この世にアンドロイドはごまんといる。砂漠の中から一粒のダイヤを探し当てるのと同じくらい、捜索は困難を極めたよ」
だけどね、と先頭に立っていた初老の男がわらった。
それはどこか気持ちの悪い、貼り付けたような笑みだった。
「君もよく知っているだろう。連日テレビを騒がせている、あのアンドロイド。アダムとかいう、米国がつくった訳のわからんアレが」