ブルー・ロマン・アイロニー
「……“彼”の名前はルーカスです。アダムでも、アレでもありません」
わたしがそう言うと、男がふうん、とつぶやいた。
「きみは“そっち”なのか。……とにかく、映っていたんだよ。その出回っている動画の一つに。我々が血眼で探していたアンドロイドが」
「……なんで、そんなことをわたしに」
「お気楽なもんだよ。あれだけ捜し求めていたアンドロイドは身を隠すどころか、こんなお嬢さんと一緒に学校に行っていた。私たちへの皮肉にさえ思えた。あのアンドロイドは研究所にいるときから随分と皮肉屋だったから」
「あまり?」
そのとき、リビングからノアの声がした。
わたしがなかなか戻ってこないから不審に思ったんだろう。
「来ないで!」
わたしはリビングに向かって叫んだ。
だけどノアが玄関に顔を出すほうが早かった。
そうして、その顔がさっと強張ったとき、わたしは自分の予感が当たったことを悟ったんだ。
「……お前ら」
忌々しげにつぶやくノアに、大人たちはため息混じりにこう言った。
「やっと見つけた。こんなところにいたんだな。────サトリ」