ブルー・ロマン・アイロニー
愕然としているわたしに、研究者たちが満足げに口角を上げた。
「つまり、きみの考えていることはすべて筒抜けだったんだよ。このアンドロイドにはね」
そうか、そういうことだったんだ。
わたしが考えていることを口に出しているんじゃなくて、ノアが、わたしの心の中を読んでいたんだ。
なんだ、そっか。そうだったんだ。
「でも……なんでナンバリングがされていなかったんですか?」
「サトリは読心術が使える、唯一無二のアンドロイドだからね。世界に一つしかないものにナンバリングする必要なんてないだろう?」
もういいかな、と初老の男が言った。
きっと彼がこの中でいちばん偉い人なんだ。
くすんだ瞳の中にはわたしは映っていなかった。ノアしか映し出していなかった。
「私たちも暇じゃないんだ。サトリも回収できたことだし、これで失礼するよ。あ、今日のことはくれぐれも他言しないように」
ノアを連れて出ていこうとする研究者たちを、わたしはあの!と引き留めた。
「どうなるん、ですか?ノアは……このあと、どうなるんですか」
「それをきみにいう理由はどこにもない」
「……お願いします、教えてください。誰にも言いません」
「……研究所からの脱走に関してはエラー以外のなにものでもない。だけど、エラーは直せばいい。私たちはその分野の専門家だからね。心配しなくても、破棄にはしないよ。研究を進めるだけだ」