ブルー・ロマン・アイロニー
「そう、ですか」
その言葉に、わたしは少しだけほっとする。
少なくとも処分されることはない。それが知れただけで安心した。
そうして研究者たちが出ていくとき、ノアと目があった。
「……ごめんな、今まで。世話になった」
「っ……ノア、」
ぱたんと目の前で閉じたドア。
わたしは追うように玄関を出て、アパートの2階から去っていくノアを見つめる。
そっか、やっぱり捨てられたんじゃなった。
自分で、逃げ出してきたんだ。
よっぽど研究所での生活がいやだったのかな。
外の世界を──自由を、知りたかったのかな。
ノアの背中がどんどん小さくなっていく。
……しょうがないよね。
だって、ノアはアンドロイド。
研究のために生み出されたというなら、その目的を果たさなきゃいけない。
……ルーカスくんもそうだったじゃん。
だから、しょうがない。