ブルー・ロマン・アイロニー
ノアの上着をぎゅっとにぎった。
「わたし、ノアが好きだよ……大好きなんだよ」
「……俺だけじゃない。あまり、お前は……必死にアンドロイドを“好き”になろうとしてた」
そっと抱き寄せられたわたしは、ノアの背中に手をまわした。
耳の後ろからノアの低くて落ち着いた声がかけられる。
「両親が最後まで愛したアンドロイドを、お前は嫌いきれなかったろ。わかってんだぜ、俺はよ」
「……それも、読心術で?」
「いいや、これは違う。お前の行動で、言葉で、視線で、表情で。じゅうぶん過ぎるほど伝わったよ。俺は……いや、俺“も”。出逢えたのがお前でよかった」
それはまるで別れのあいさつをするみたいだった。
わたしはぎゅうっとノアの背中を抱きしめる。
いつだってわたしは、大切なものをこの手から取り零してきた。
だから、今度は。
ノアだけは、絶対に離したくない。