ブルー・ロマン・アイロニー
もういいだろう、と研究員たちがタイムリミットを告げた。
ノアが立ちあがる。
すれ違いざまに、ぽんと頭に手をおかれた。
いつもわたしを励まし、ときには諭し、いろんなところに連れていってくれた手が、離れていく。
「……待ってるから。わたし、先に帰って待ってるから。だから──」
わたしは涙をこらえながら、後ろを振りかえる。
そこにノアはいなかった。
わかっていたことなのに、それでも涙が零れそうになって。
ぐっと唇を噛みしめて、
──────笑ってやったんだ。
「そのときは、また海に行こう」
なんであのとき海に落とされたのか。その意味がやっとわかったよ。
それなら今度はわたしが海に突き落としてあげる。
だから、もっと防水機能をアップグレードしてもらってきてよ。
明日じゃなくてもいい。
何年後でも、何十年後でもいいから。
だから、ノア。
そのときがきたら────
「わたしにおかえりって言わせてね」