ブルー・ロマン・アイロニー
病院に付き添ってくれたのは中年女性の研究員だった。
もしかすると骨折、絶対にヒビは入っていると思ったわたしの足は、「捻挫です」とさもありなんに診断された。ちょっと恥ずかしかった。
お会計は向こうがしてくれた。
病院を出てタクシーを待っているとき、それまでずっと無言だったわたしはその人に頭を下げた。
「……ありがとうございました」
目をぱちくりされる。
わたしだって本当は、ノアに酷い扱いをしていた人たちにお礼なんて言いたくなかった。
だけどそれとこれとは話が別。
「病院についてきてくれて、お金まで出してくれて……ありがとうございます」