ブルー・ロマン・アイロニー
「ふふ……やっぱり、あの人の子だわ」
「え?」
「あなた、藤白あまりちゃんよね?」
「そうですけど……」
わたしのことなんて、もう調べはついているだろうに。
いまさら何を確認することがあるんだろう。
「あなたのお父さんとお母さんがいなかったら、今のロボット工学やアンドロイドはここまで進んでいなかったわ」
そうか、お父さんとお母さんは有名人だったから。
だからこの人もふたりのことを知っているんだ。
「そしてアンドロイドを心から愛していた彼女たちは……不慮の事故でなくなってしまった。彼女たちのいないこの世界には、アンドロイドたちへの差別も未だに根強く残ってる」
「……それはお父さんたちのせいだって、そう言いたいんですか」
違う、と女性はすぐに否定した。
「あたしは栞さん──あなたのお母さんの後輩だった」
「……え?」
「栞さんはあたしに語ってくれたの。アンドロイドが人間と平等に扱われる世界の実現を」
「アンドロイドが人間と平等に扱われる世界……」
「あたしはそんな栞さんの意思を受け継いだ」
「それって……」
「あなた、────って知ってる?────……、」
わたしは目を見開く。
そのときタクシーが病院の入口にやってくるのが見えた。
女性はわたしの手をとって、強く、強く握りしめた。
「今は従うしかないけれど、いつか必ず……あなたの望む世界になるから。してみせるから」