ブルー・ロマン・アイロニー
「……だってもう、わたしのアンドロイドじゃないし」
「ははあ、そういうことな。わかった。じゃあ、俺を拾え」
「いやだ。拾わない」
「まじかよ。この流れでそんなきっぱり断るか普通」
当たり前だよ。
なんだと思ってんの……自分のこと。
「だってノアは物じゃない。わたしの友人として、家族として、言いたかったのに。もういい、ノアが言わないならわたしから言う」
「あまり……、ん?あまり?どこ行っ……うおおおおああッ!?」
そこ立っていた────ノアに、わたしは助走を付けて、思いっきり飛び付いた。
「おかえり!!!!」
「声でけえ!!ただいま!!!!!!」
しっかりとわたしを抱き留めてくれたノアは、そのままぐるぐると回った。
いつの日か家族で乗ったメリーゴーランドのように白い景色がビュンビュンと変わる。
どこから歩いてきたのか、ノアの頭にも肩にも雪が積もっていた。
わたしはそんなノアの首に抱きついて、顔をうずめた。
「お前、俺といると泣いてばっかだな」
「わたしに泣いてもいいって言ったのはノアだよ」
うれしい、とつぶやく。
「うれしい。ノアが帰ってきてくれて、うれしい!」
「俺も……、あ」
「え、うそ」
ぱきん、といやな音がしてアパートの柵が一部だけ外れた。いや転落防止柵の意味!
どうする?と顔を見合わせたわたしたちは、もうすでに体が傾いていて。
そのまま真っ逆さまに落ちていった。