ブルー・ロマン・アイロニー
「みゃあ」
さっきまでとは毛色のちがう鳴き声がしたかと思えば、男の影から3匹の仔猫がひょこりと顔を出した。
よく見ると男は、なにかボロボロの、擦り切れた毛布のようなものを下敷きにしていた。
わたしをここまで案内した黒猫が、男の下からその毛布を引っぱり出そうとしている。
猫たちはここを寝床にしていたのか、金色の瞳でわたしに訴えかけてくるのだ。
このデカい男を退けろ、と。
「む、むりだよ。むりむり絶対むり」
猫の社会には適材適所という言葉はないのだろうか。
起こしてしまう前に男から離れようとした。だけど、足に草が絡まっているのか身動きが思うようにいかない。
それどこか男の体に顔を押しつけるような形になるわ、興奮した猫たち家族が「んなぁおあぉあおあ」と鳴き出すわで、状況はもう最悪だった。
「しーっ、お願いだから静かにして……!」
そのとき男がぱちりと目を覚ました。