ブルー・ロマン・アイロニー
唐突すぎる覚醒にわたしはまたしても短い悲鳴をあげる。
やばい殺される。今度こそ死ぬ。
ぎょろりとした、黒い、明度の低い瞳がわたしを捉える。
瞬間、体が引きつったように固まった。目が離せない。
喉がもう一度悲鳴をあげる準備を始めた、そのときだった。
パソコンの起動音のような低い音が耳に入ってきたのは。
「あんたが俺の新しいご主人サマか?」
「は、はい?」
わたしの声に反応するようにして、短い電子音が鳴った。
音の出所はさっきのも含めて男からであることに気付く。
これは、今のは。
……ああ、“これ”は。
ヤクザでも、殺し屋でも、──そもそも人ではなくて。
「────……アンドロイド」
「おう。おはようさん」
低く呟いたわたしに、アンドロイドがにやりと笑って片手を挙げたのだった。